好きなほうを選べ

※タイトルは診断メーカーより

 

「待たせたな。どっちがいい?」
 まぶしい笑顔を浮かべたミスタが、道向かいのジェラートショップから戻ってくるなりぼくに問う。
「こっちはレモネード味。ラムネ入りで、夏限定。そんでこっちはただのイチゴだ。いつでも食える」
 買ったばかりのジェラートで塞がった両手を交互に持ち上げてみせながら、ミスタは楽しそうに言う。夏は始まったばかりだというのにうだるような暑さで、いつでも小麦色をしている彼の首筋にも、うっすら汗がにじんでいる。
「好きなほう選べよ、ジョルノ」
 穏やかな声音。大きな手のひらと四角い爪の張り付いた五指が、ワッフルコーンをほとんど覆っている。ただでさえ暑いのに、これじゃあ下のほうからどんどんジェラートが溶けていってしまう。
 早く選ばないと。頭ではわかっているのに、こんなときでもなお、ぼくは貴重な時間を割いて、年上の彼に優しさの皮をかぶせた意地悪を言ってしまう。
「ぼくはどっちでも構わない。ミスタ、きみはどっちが食べたいんだ?」
 高い位置で輝く太陽を背負ったミスタが、むっと口をへの字にして片眉を跳ね上げた。ワッフルコーンの縁をゆっくりと伝い始めた淡いイエローとピンクを気にしながら、ミスタは手にしたジェラートをずいとぼくの鼻先に突きつけてくる。
「オレはよぉ〜、おめーに聞いてんだけど? ジョルノくんはどっちが食いてえの?」
 目に見えておもしろくなさそうな顔をする彼を見つめ返しながら、緩みそうになる口角を必死で引き締める。
 惜しげなく吹かせてくる兄貴風に逆風をぶつけてやったとき、すぐムキになる彼が愛おしい。ムキになってることに自分で気付いて、ごまかすように咳払いを挟むところも。すぐに持ち直して、離しかけた主導権の端っこをしっかりつかんでくるところも。
「早く言わなきゃよ〜、溶ける前に両方オレが食っちまうぜ?」
 口の端に浮かべた不敵な笑みが、苦し紛れでもいつもと変わらずカッコいいところも。
 全部、好きだ。この一部始終に浸るためならば、多少の時間の無駄は惜しくないと思えてしまうくらいに。
「……じゃあ、イチゴのほうください」
「ふむ」
 あえて彼が好きなほうのフレーバーを選んでやると、ミスタはやや芝居がかった返事をした。手元のイチゴのジェラートを見た黒い瞳が、再びこちらに向けられる。めんどくさい奴だと思ってるだろうか。思ってるだろうな。でもぼくは当分、きみのペースをすすんで乱すこの悪癖をやめられそうにないんだ。
「イチゴな。そんならちょうどよかった。オレが今食いてえの、レモネードのほうだったしよ」
 ほれ、とイチゴ味をあっさりぼくに手渡して、美味そうにレモネード味のジェラートにかぶりつくだけの余裕を、きみが見せつけてくるうちは。
「早く食えば?」
 ラムネの粒をカリカリ噛みながら、笑みを崩さずミスタが言う。ぼくは返事をせずに、大口を開けてイチゴのジェラートに食らいついた。ワッフルコーンのわずかなひびから溶けたピンク色が染み出て、指先をべたつかせた。