神頼み

※タイトルは診断メーカーより

 

 ……そう、ミスタ。きみは神を信じているんですね。
 いや、意外ではないよ。そうだろうなと思います。「4」を──ああごめん、例の数字を避けようとするきみの執念ってすごいものがあるし。験担ぎなんかもけっこう気にしているし。根拠のないものを本気で恐れたり信じたりできるきみは、そりゃあ神のことだって信じているだろうね。神だってしょせん人間の作り出した概念で、存在に根拠のないものだから。……えっ、イヤミに聞こえる? そんなつもりはないんだけどな。
 ぼくは神を信じていない。
 あらゆる偶像を神に見立てて祈りを捧げたり、身のまわりに起こることについて手当たり次第感謝したり、挙げ句の果てに、浅ましくあれこれ願い事を叶えてもらおうとしたり。
 無駄なんだ、何もかも。どうして無駄なのか説明するのも無駄だ。無駄無駄。
 でも、その思想自体を否定する気はない。
 妙な宗教に傾倒して馬鹿みたいにお布施を積んだり、目に余る奇行を繰り返したりするならともかく。きみみたいに、自分のできることを全部やったうえであとを神に委ねるというスタンスには、文句のつけようもないからね。
 ええ、ピンチのときの心の拠り所が神であってもいいんじゃあないですか? 神頼みってやつを好きなだけすればいい。ギャングのくせに、ときどき思い出したように「神様が見てるからな」なんて申し訳程度に行いをよくしてみたりするきみのこと、もしかしたらほんとに神は見てくれてるかもしれないしね。
 前に言ったように、ぼくはきみに降りかかる「4」の──ああはいごめんごめん、例の数字の呪いを全て引き受けるつもりだけど。そういう覚悟をしてるけど。さすがにいつもきみのそばについていることはできませんからね。なんなら今回みたいに、他でもないぼくが、きみに遠方での危険な任務を命じることもしょっちゅうだし。
 神は全知全能って言いますもんね。ぼくがきみについててやれないときは、思う存分当てにすればいいじゃあないですか、神のこと。それで無事に帰ってこられたら、寝る前にでも手を組んで「神様ありがとう」って感謝すればいい。そうすればきっと、この先も神はきみを愛し続けてくれるかもね。
 ……どうしたんです? ヘンな顔して。なんか怒ってる?
 なに? 「オレが一番信じてるのはおまえだぜ」?
 ……べつに、知ってますよ、そんなこと。わざわざ言ってくれなくたって。なんですか? ぼくそんなに拗ねてるように見えました?
 ほら、早く支度を始めて。午後には発ってもらわなきゃあならないんだから。
 今回も厳しい任務になると思います。いつもきみにばかり任せてしまって申し訳ないけど。
 ぼくは神じゃなくて、きみだけを信じて待っています。重いようなら、少し分散させてもいいですけど。きみの信じる神様に祈る形で。「きみが無事に帰ってきますように」って。
 神ってのは不信心者の願いでも叶えてくれる寛大なヤツだってこと、知っているから。本当は、ずっと前から。